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分割民営化を間近に控えた国鉄では、民営化後の経営基盤が脆弱とされた北海道・四国・九州向けに新造車両を製造することで、同地域に在籍していたキハ20系を始めとする老朽車両の置き換えと、それに伴う車両体質改善や経営基盤の強化が図られた。この目的により製造された車両群のうち、1987年に製造された17m級1エンジン車両がキハ31形であり、全車両が九州に配備された。同時期に北海道・四国に導入されたキハ54形同様軽量ステンレス製となっており、全体的なデザインはキハ54形0番台に準じたものとなっているが、こちらは青帯を窓下・側面上部に巻いている。側扉はバスのものと同じタイプの折り戸で、ワンマン運転に対応するため両端に設けられている。乗務員扉は運転台のある側にのみ設置されている。エンジンはキハ37形で用いられた直噴式エンジンを横向きに改良した出力250PSのものが搭載されたが、製造コストの削減及び既存車両との併結が考慮された結果液体変速機は廃車発生品が流用されており、最高速度は95q/hとなっている。勾配線区での使用も考慮されており、砂まき装置が設置可能となっている。熊本に所属した車両を中心に、実際に勾配線区で使用された車両については追加で設置されている。車内は観光への使用にも配慮され転換クロスシートが1列+2列、シートピッチ910oという配置で展開されている。当初製造された20両については新幹線0系の廃車発生品を改良したものがあてがわれた。なお、車長が短いこともあり、トイレは搭載されていない。当初より運賃収受式のワンマン運転に対応しており、乗務員室背後には運賃箱や料金表示器等が設けられている。キハ31形はまず1987年に20両が製造され、竹下気動車区及び熊本運転所に配置された。翌1988年にも3両が増備されたが、こちらは座席も新製されており、フレームの目立つ転換クロスシートが搭載された(ごく一部を除く)。なお、同車と同様のコンセプトで製造された気動車群の中で、分割民営化後にも新造されたケースはキハ31形が唯一である。竹下気動車区に配置されていた当初は香椎線でも使用されていたが、後に香椎線からは転出し、数度の車両転配を経て現在は熊本運転区と直方車両センターに在籍している。なお、一時期大分に在籍していた車両は混雑緩和を目的に一部座席がロングシート化されている。また、熊本所属の車両を中心に一部の車両には前面に排障器が追設されている。キハ31形のうちキハ31-20は2004年にくま川鉄道に譲渡され、同車KT31形として湯前線で運用されたが、車両置き換えに際して2013年に廃車解体されており、現在に至るまでキハ31形唯一の廃車となっている。残る22両は、熊本所属車は三角線と肥薩線、直方所属車は筑豊地区の各線で活躍していたが、2016年に肥薩線から撤退したのち2017年の若松線へのBEC819系導入に際しては廃車が発生し、末期は三角線のみの運用となっていた。これも2019年3月のダイヤ改正で撤退し、同月に原田線で行われた特別運転を最後にキハ31形は全車とも運用を離脱している。
2013,03,16 人 吉 |