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922形は東海道・山陽新幹線で用いられてきた検測車両であり、0番台(T1編成)、10番台(T2編成)、T3編成(20番台)という3本が存在した。東海道新幹線開業に合わせて配備された0番台は、鴨宮モデル線で各種試験を行っていた新幹線の先行試作車である1000形のうち、4両編成を組んでいたB編成を改造したものである。外装は黄5号を基調に窓周りを青20号としたもので、以降の事業用車に引き継がれる塗装となった。前照灯は竣工後しばらくして0系と同一のものに統一されたが、前照灯横の編成表記や最高時速256km/hを記念したプレートはそのままとされた。また一部車両に採用された六角形の側窓もそのままとされ、1000形当時の面影を残す存在であった。車内は信号、通信を測定する号車、電気測定をする号車と控車兼資材車に分かれ、万一の事故発生時の救援資材も搭載していた。の当時、軌道検測は921形試験車により922形ディーゼル機関車の牽引で行われることとなっていたため、こちらは信号・電気設備の検測に特化していた。1970年代になり山陽新幹線が延伸されると旧来の検測では不都合が生じること、0系と構造が異なること、0系の廃車を前にした解体のテストケースとすること等の理由から、T1編成は1975年に廃車解体されている。この後継として編成を7両に増強し、軌道検測車も編成に組み込んだ総合検測車両としてT2編成が1974年に製造された。更に1979年にはT2編成の検査予備等を目的にT3編成が製造され、以降922形は2編成体制となった。T2、T3編成はいずれも0系をベースにした新造車で、同時期に製造された0系の特徴を受け継ぎ、T2編成は側窓が大型、T3編成は側窓が小型となっている。また車内レイアウト等にも差がある他、前頭部の連結器カバーの塗装も異なる。いずれも当時最新の検測装置を導入し、当時の営業最高時速である210km/hで走行しながらの検測が可能となった。前述のとおり軌道検測車も編成内に組み込まれているが、こちらは形式が921形と既存車を踏襲しており、3台車配置等特徴ある外観となっていた。車両性能は当時の0系と同一だが、検測機器の都合で速度向上は行われず、最高時速は210km/hのままとなったことから、1986年以降検測は夜間となった。同年には両編成とも自動分割併合の試験にも供されており、これが後のJR東日本の新幹線で活用されることとなり、その後の新幹線発展の礎を築いた車両ともなっている。黄色地に青帯を巻いているという特異性、また検測車両であるという立ち位置や希少性からいつしか「ドクターイエロー」と呼称されるようになり、分割民営化後には公式にそう呼ばれるようになった。T2はJR東海、T3編成はJR西日本に継承されて長らく検測に従事していたが、老朽化に加えて後継車の台頭で走行性能などに劣る本形式は営業運転中の検測が行えなくなるなど、運用上の不都合も生じつつあった。そこで後継の検測車両として923形が製造され、これに置き換えられることになった。T2編成は2001年に廃車され、残るT3編成もしばらくは残存したものの、JR西日本が配備したT5編成に置き換えられ、惜しまれつつ2005年に廃車されている。T3編成の1号車(922-26号車)は博多総合車両所での保管の後2011年からはリニア・鉄道館に保存された。長らく同地で保存されたが、923形の廃車に伴い同車のリニア・鉄道館での保存が決まったことから本車はJR西日本に返還され、石川県白山市のトレインパーク白山に移設の上再度保存されることになった。
2012,12,05 リニア・鉄道館 |