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2000年登場。博多~長崎間を結んでいた特急「かもめ」の所要時間短縮を目的に開発された特急型車両である。全車とも日立製作所で製作されており、同社の手掛けるアルミ合金製車体である「A-Train」が採用されている。車体デザインは水戸岡鋭治氏によるもので、車体色は白を基調とし、列車名の由来となったカモメの嘴の色でもある黄色を前面窓周りと側面下部に配し、乗務員室から前面にかけて流線形状に黒く塗装されスピード感が強調されている。前面形状はドイツ鉄道のICE-3に類似した正面非貫通構造の流線形構造となっているが、本車を開発するにあたりICEのデザインを手がけたアレクサンダー・ノイマイスター氏の承諾を得ているとされている。制御方式は815系に準じており、JR九州の特急型車両として初めてIGBT-VVVFインバーター制御方式が採用されている。この他回生ブレーキや抑速ブレーキも備えている。本形式は前述の目的を達するために制御付自然振り子装置が採用されており、この点は883系に準じているが、本系列では長崎本線肥前鹿島~諫早間の連続急曲線区間における安定性の向上のため、883系に比べて空気バネの左右における間隔が10cm広くとられている。更に高速域における加速度向上が図られており、これら要素により連続急曲線区間でも安定した高速走行ができるようになっている。本系列の特徴の一つに、普通車、グリーン車のいずれも座席が本革張り、床がフローリングとなっている点が挙げられる。この本革はアウトレット品が用いられているため製造コストは比較的安価に抑えられているが、豪華な内装ということで登場時は大きな話題となった。普通車は2+2人掛けで980㎜ピッチ、グリーン車は1+2人掛けで1150㎜ピッチとなっている。いずれも荷棚はハットラックとなっている。本系列は中間に仕切りがない反面デッキ部分の面積が拡大しており、大型窓とカウンターを備えたコモンスペースやミニギャラリーが設けられている。885系はまず6連7本が特急「かもめ」と一部の「ソニック」「きらめき」として営業運転を開始した(現在は「きらめき」からは撤退)。なお、本来九州以外には縁のない車両だが、全車とも山口県から甲種輸送されていることに加え、2000年の鉄道イベントで関東は大宮まで入線した実績はある。その後2001年には特急「ソニック」の増発を目的として同系列が増備されることになったが、こちらは前照灯の形状が異なりワイパーが増設されている他、窓周り及び下部の色が883系に準じて青色になっており、座席の革の色が臙脂系となっている等のマイナーチェンジが施されている。この増備車は当初5連で製造されていたため、特急「ソニック」にほぼ専属で用いられた。この増備車も2003年までに中間車を増備のうえで6両化されたため、885系は6連11本という陣容になった。なお、2003年7月に発生した置き石に伴う脱線転覆事故で3両が損傷がひどく廃車されているが、翌年に同数が製造されたため陣容は66両のまま変わっていない。以降は基本的に次数によらず「かもめ」「ソニック」で混用されるようになった。なお、本系列は2001年に鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞している。2011年から翌年にかけて1次車の黄色い部分も青色に統一され、ロゴマークも統一された。2024年現在は西九州新幹線開業の影響で「かもめ」が廃止されたことから、「リレーかもめ」「みどり」「かささぎ」及び「ソニック」に用いられており、引き続きJR九州の代表的な特急型車両として活躍が続く。
2013,03,14 肥前山口 |