883系
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 1994年登場。大分自動車道の延伸とそれに伴う高速バス等の台頭に対抗するため、日豊本線系統の特急列車の体質改善・高速化を図ることとなり開発された特急型車両である。787系に続き、トータルデザインは水戸岡鋭治氏が担当している。車体は前頭部を除き軽量ステンレス製で、前頭部は普通鋼製である。本形式は日豊本線のイメージアップを図り、ポップカルチャーの要素を取り入れ、「ワンダーランドエクスプレス」というコンセプトをもとにデザインされている。ステンレス部分は無塗装を基調とし、前頭部と側扉はセルリアンブルーメタリックに塗装された。前面はヨーロッパのトラック等をイメージした3字曲線を取り入れた特徴的なデザインとなり、取り外し可能なパネルを中央に据え付けた。実用本位ではなく装飾目的でバックミラーや円筒が設置されており、787系とも大きく異なる印象となった。日豊本線は曲線が多い路線特性から、所要時間短縮を図るために制御付き自然振り子方式を採用した振り子式車両となったが、これはJR九州で初の導入であると共に、交流専用車両としても初の振り子式車両となった。また、高速走行時の蛇行動抑制のため台車にはヨーダンパが搭載されており、安定的な走行に寄与している。制御方式はJR九州の特急型車両として初めてVVVFインバーター制御方式を採用し、主電動機出力を増強したこともあり、最高時速は130km/hとなった。これらの機構により、博多大分間の所要時間は485系時代と比べ30分以上もの短縮を実現した。なお、回生ブレーキは搭載せず、制動は発電ブレーキとなっているため別途抵抗器を搭載する。列車内を一つの「アミューズメントパーク」に見立ててデザインされており、デッキやトイレの壁面は着色されたアルミパネルが用いられている他、デッキにはオブジェ等が飾られるショーウィンドウが設けられている。また一部の車端部には「コモンスペース」と称されるフリースペースや、小カウンターが設置されている。グリーン車の運転台側は専用のパノラマキャビンが設置されている。客室部分は大分・博多方制御車(クロハ882形)の半室が1+2人掛けのグリーン車である以外は2+2人掛けの普通車(大半の車両の中間部分はセミコンパートメント)となっていた。グリーン車は鉄道車両としては初めて本格的に本革が表皮に採用されており、グリーン車の座席色こそ黒色だが、それ以外のカラーリングについては、幾何学模様のカーペット、座席モケット、ヘッドレスト等非常にカラフルとなっていた。特にヘッドレストについては某キャラクターの耳の形にもみえる独特なもので、また普通車は赤、緑、青の3色に配色されており、その点でも他に類をみない座席であった。総じて、正に「ワンダーランドエクスプレス」の名に違わない内装と言えるものであった。883系は1994年に7連2本、翌年に7連1本が投入され、この3本が1995年3月から営業運転を開始した。同年4月から本形式の充当列車は「ソニックにちりん」と区別された。1996年には7連2本、1997年には5連3本が増備され、1997年3月のダイヤ改正からは列車名が「ソニック」と改められた。増備時期により前面形状等が異なっている他、5連で製造された編成は編成ごとに前面の色が黄色、黒、銀とそれぞれ異なっており、彩りをそえた。883系は製造から10年が経過した2005年からリニューアルが開始され、「大人のWONDERLAND EXPRESS」というコンセプトに改められた。このリニューアルにより外装はステンレス鋼体を含めインディゴブルーメタリック1色に統一された。併せてバックミラーは撤去されている。内装も座席の特徴的なヘッドレストはそのままながら全体的にシックな装いとなり、床材も普通車はフローリングになる等印象が大きく変わっている。なお、クロハ882形(グリーン・普通合造車)には窓下にコンセントが追設された他、普通車のセミコンパートメントは通常座席に改められた。その後2008年には編成を7連に統一する目的で中間車ユニット3本が製造されたが、こちらは既に製造されていた885系をベースとした車両となり、1000番台に区分された。1000番台は内装も885系に近いもので、特徴的なヘッドレストは採用されていない。2025年の時点で初期車製造から30年が経過しているが、今もなお日豊本線系統のフラッグシップとして活躍を続けている。なお、885系とは異なり本形式はほぼ「ソニック」専属であり、他系統の特急には基本的に運用されない。

 2023,09,25 大 分


■Variation
 1996年に製造された3次車は中央のパネル部分にフォグランプやルーバーではなくロゴマークが挿入されている。後に製造される4次車もデザインは共通となっている。

 2018,12,31 博 多
 1997年に製造された4次車は、前面のパネルデザインは3次車に準じていたが、当初5連を組んでおり、編成ごとに前面の色が違うという特徴を有していた。リニューアル後は全て同じ外観に統一されたが、編成両数を7連に統一する目的で、2008年に885系と同型のアルミ製中間車(1000番台)を組み込んでいる。1000番台のインバーターはIGBT素子を用いており、この点は他の883系と異なっている。

 2018,12,31 小 倉
2025/08/24