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2016年登場。JR九州では2012年に817系を改造した蓄電池駆動車両を開発し、交流電化区間と非電化区間を直通可能な車両の試験を日田彦山線等で行ってきたが、その結果を反映した営業用車両として製造された車両がBEC819系であり、全車とも日立製作所で製造された。世界初となる量産を前提とした交流蓄電池駆動車両であり、「DENCHA」という愛称を有する。編成は若松方からクモハBEC819形(制御電動車、パンタグラフ搭載)、クハBEC818形(制御車、トイレ・蓄電池搭載)という2両で組成されている。車体は817系3000番台等と同じアルミダブルスキン鋼体で、日立製作所が手掛ける「A-train」を採用している。車体デザインも817系に準じているが、こちらは前照灯がJR九州では初めてLEDとなった他、「地球環境にやさしい」をイメージした青色を側扉やロゴマーク、更に主回路蓄電池箱の色に取り入れている。制御方式はIGBT-VVVFインバーター制御方式で、VVVFインバーター制御方式を採用する他の交流電車と同様、交流20000Vの電圧を主変換装置で直流電圧に変換し、再度VVVFインバーターで三相交流に変換して動力としているが、この回路に蓄電池が接続されており、直流電力として蓄電・放電を行う。他の蓄電池車両と同様、架線下ではパンタグラフから集電のうえ、その電力で走行すると共に蓄電池に充電し、非電化区間ではパンタグラフを下げ、蓄電池から給電すると共に制動時に回生制動により蓄電池に充電する仕組みとなっている。これはIDタグで管理されており、非電化区間に集電装置を上昇したまま冒進しないよう設計されている。なお、車両情報装置は日立製作所が開発した「Synaptra」を搭載している。車内はオールロングシートで、クハBEC818形の車端部には車いす対応トイレ、クモハBEC819形の車端部には機器室が設けられている。カラースキームや接客設備等は305系に準じたものとなっており、側扉は押しボタン式半自動扉開閉機構「スマートドア」が採用された他、車内案内表示器は17インチLCDが採用され、扉鴨居部の他機器室壁面にも設置されている(機器室壁面のものは、次駅案内の他に蓄電池走行の状況等も案内する)。なお、非電化区間のトンネル等での抵触防止のため、パンタグラフ部分は低屋根構造となっている。BEC819系はまず1本が落成し2016年10月より筑豊本線折尾〜若松間(若松線)で営業運転を開始した。当初は限定運用が組まれていたが、2017年3月のダイヤ改正までに6本が追加増備され、若松線全列車が本系列の運用となった他、筑豊本線桂川〜折尾間及び篠栗線(福北ゆたか線)でも営業運転を開始し、博多まで乗り入れるようになった。同年には新技術の導入と電車投入による非電化区間のイメージ向上が評価され、ブルーリボン賞を受賞している。更に2019年には香椎線にも導入されることになり、蓄電池容量を増大し車載カメラを搭載、内装も821系に準拠する等のマイナーチェンジが施された300番台が11本投入され、2019年3月のダイヤ改正で香椎線の全列車も本系列による運用となった。なお、当初投入された0番台の一部は300番台に準じた改造がなされ、100番台に区分されている。全車両とも直方車両センターに在籍するが、香椎線用の車両は竹下が運用拠点となっている。なお、福北ゆたか線区間では817系と併結する運用もあり、現時点の蓄電池駆動車としては唯一、他形式と併用される形式となっている。
2017,10,21 折 尾 |