711系
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 試作車が1967年、量産車が1968年登場。函館本線の小樽〜滝川間の電化開業にあわせて製造された近郊型車両で、国鉄としては初めて北海道向けに製造された電車である。それまでの国鉄型交流対応電車は新幹線や試作車を除き直流電化区間への直通を考慮し交直流車として製造されていたが、本車はそれを考慮せず、初めての交流専用車となった点が特徴である。近郊型車両と言う位置づけではあるが、車体は急行型車両に近く、両端に片開きの扉を備え、扉付近にデッキを備えている。前照灯は当初からシールドビームが採用され、尾灯とタイフォンが下部に位置するという、後の113系1000番台に近い印象となった。当初の車体は赤2号を基調に警戒色としてクリーム2号を前面窓下に配しており、配色パターンは交直流近郊型電車に類するものであった。駆動方式は中空軸平行カルダン駆、主電動機はMT54とこの点は一般的な国鉄型電車に類似しているが、制御方式は電車として初めて速度制御からスイッチ類を廃したサイリスタ位相制御方式が採用された。走行機器類の無接点化により冬季における電機品故障の要因が廃されたことは、結果的に冬季の故障防止にも寄与した。また機器構成の簡略化から、国鉄の新性能電車では1M方式を初めて本格的に採用した。台車は空気バネ台車で、こちらも凍結防止などの対策が施された本系列独自仕様の台車が採用されている。車内はデッキ付近がロングシート、その他はボックスシートというセミクロスシートとなっており、床材は木材を廃しリノリウムとなった。車内のカラースキームは当時の近郊型車両とは異なる暖色系で、かつボックスシートは急行型電車と同等のシートピッチを有した。デッキにはトイレの他独立した洗面所を有しており、総じて急行列車への投入も考慮されたアコモデーションとなっていた。実際電化区間のみを運行する急行「かむい」の一部に本系列が充当された他、1971年から1975年までは札幌〜旭川間ノンストップの急行「さちかぜ」にも充当された。特に「さちかぜ」の表定速度は国鉄急行最速で、特急をも凌駕する程の俊足ぶりを誇った。電動車の端部には雪切室が設けられ、主電動機を冷却する際に用いる外気から雪と空気を分離させることができる。これにより着雪による主電動機故障を防止できた。このように本系列はタイ北海道向けに徹底した耐寒耐雪構造が施され、冬期間における安定的な運転に寄与している。711系は1969年までに試作車900番台が4両、量産車が55両投入され(うち1969年に製造された電動車は誘導障害への対策が施されたことから50番台に区分)、しばらくその陣容で推移した。なお、試作車は2連2本の陣容で、一段上昇窓と2段窓、1枚引き戸と4枚折り戸など、編成により異なる特徴で量産車へのフィードバックがなされている。1980年の千歳線・室蘭本線電化に伴い仕様変更された車両が新たに55両製造され、増備車は100番台に区分された。100番台は製造当初より前照灯が4灯配置となった他、車体の難燃化、側面への自動方向幕の設置、搭載機器からのPCB・水銀の撤廃、一部にステンレス製部品を導入する等大幅なマイナーチェンジが施され、後に前照灯4灯配置は既存車にも波及している。最終的には試作車も含めて114両の陣容となり、北海道の電化区間で活躍した。1984年からは赤1号を基調にクリーム1号の帯を巻いた姿に改められ、「北の赤い電車」とも呼称されるようになった。全車JR北海道に継承され、その後後継となる721系が製造されると一部の車両では側扉の3ドア化がなされた他、731系への導入に向けた内装更新が施された車両も現れるなど、平成初期の時点では全車とも健在で主力車両の一翼として使用された。731系の増投入により1998年から廃車が始まり、試作車及び50番台までの編成は2006年までに全て廃車された。以降は100番台の編成のみが残り、一部編成は2001年以降に冷房化改造が施され、集電装置がシングルアームパンタグラフに換装される、運行版行表示器が省略される等の後天的な改造を経つつ後継車両に伍して活躍を続けた。千歳線及び室蘭本線での営業運転は2012年に終了したが、同年の札沼線電化に際しては同線の運用にも投入されて新たな軌跡を残した。残る編車両も製造から30年以上が経過し老朽化が進み、かつ他の車両と比べ乗降に時間を要することから、733系の投入により置き換えられることになった。2013年から廃車が再開され、2014年には小樽口での定期運用が終了。最後は札幌〜旭川間(大半は岩見沢〜旭川間)の普通列車に充当され、惜しまれつつ2015年3月のダイヤ改正で営業運転から離脱した。ごく一部の車両は静態保存されたが、他は全て廃車解体されている。

 2014,03,09 茶志内


■Variation
 3扉化された711系。札幌圏におけるラッシュ輸送対策として、1987年以降711系の一部編成(先行改造のクハ711-1・2のみ0番台、それ以外は100番台の一部が対象)で中間に客用扉が増設され、3扉となった。増設扉付近にもデッキが新設され、新設デッキと客室部分の仕切りは両開き扉となり、後に製造される721系に近いものとなった。他編成との識別のため、側扉には白い細帯が上下に追加された。なお、荷重の関係から電動車は改造対象から外れている。3扉化改造された編成は後年一部の100番台に施工された冷房化改造の対象からは外れており、廃車されるまで全車非冷房のままであった。

 2014,06,28 岩見沢
 100番台のうち、3扉化改造も冷房化改造も受けずに残った2本は北海道デスティネーションキャンペーンの一環で、2011年から翌年にかけて、登場当時纏っていた国鉄色に塗装変更された。特にS-110編成は運番表示器を復元のうえそこに編成番号を表記するようになり、シングルアームパンタグラフを除けば国鉄時代に近い姿になった。2編成とも塗装変更から廃車時までこの塗装を貫いた。

 2014,03,09 札 幌
2022/10/1