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2023年登場。従来特急「やくも」に使用されていた381系の置き換えを目的に開発された特急型車両である。本形式はイチバンセンの川西康之氏によりトータルデザインが監修されている。車体形状は271系に準じているが、こちらは前照灯・フォグランプが縦配置になっている。車体色は、宍道湖の夕日やたたら製鉄、大山夏山開き祭前夜祭のたいまつという沿線にまつわる4つの「銅色」をベースにした「やくもブロンズ」という独自のものとなっており、随所に「やくも」のロゴマークがかたどられている。曲線区間の多い伯備線を高速走行することから、先代の381系同様振り子式車両となっており、JR西日本と鉄道総研、川崎車両が共同で開発した「車上型の制御付自然振り子方式」が採用されている。制御付き自然振り子方式の車体傾斜車両はJR四国の2000系気動車以降多数採用されているが、地上設備が必須なうえ線路状態等により正確に作動しないことがあり(その場合も強制傾斜により安定的な走行は出来るが乗り心地は劣る)、更に地上設備の移設時に路線データの更新が必要という欠点があった。本形式の振り子制御は、予め記録していた路線データと車両に搭載したジャイロセンサーを元に割り出した位置情報を照合し、自車が曲線を通過する際に地上設備に左右されることなく適切な位置で車体傾斜が行えるというものであり、前述した欠点を克服している。また、振り子アクチュエーターの出力を無段階の連続制御とすることで、路線状態に適した緻密な車体傾斜を可能としている。これにより過去の振り子式車両に比べて乗り心地の向上が実現している。走行装置は271系に準じており、制御方式はフルSiC-VVVFインバーターによる制御となっている。また、0.5Mシステムを採用し、全車とも片側が動台車、片側が従台車である。運転台も271系に引き続きグラスコクピットが採用された。車内は出雲市方先頭車がグリーン車と普通車の合造、その他が普通車となっている。グリーン車は2+1配置で1160oピッチとなっている。座席はモケットは背ずりが黄色、座面が「やくもブロンズ」に近い色となっており、「積石亀甲」があしらわれている。グリーン車と同室の普通車は381系にはないセミコンパートメントとなっており、2+4人掛けのボックスシートと、間に折り畳み式の木製テーブルが配置されている。この座席は座面を引き出すことでフルフラットにすることが可能である。その他の普通車は2+2人座席で、シートピッチは1040oと標準よりも大幅に拡大されている。普通車のモケットは背ずりが緑と青の混在で、「麻の葉」があしらわれている。全座席にコンセントが設置されている他、セミコンパートメント以外の座席は全て可動式のピローが取り付けられている。なお、カーテンはロールカーテンとなっている。また車内案内表示器はLEDとなった。サニタリースペースは岡山方先頭車以外に設置してあるが、特に出雲市方3両目には車いす対応の大型トイレの他、簡易腰掛とコンセントを備えたフリースペースや、多用途に使える多目的室が設置されている。273系は2024年3月のダイヤ改正で特急「やくも」として営業運転を開始した。同年までに4連11本が製造され、6月には381系の運用を全て置き換えて全定期「やくも」が本形式による充当となった。なお、後期に製造された車両の一部先頭車は前面貫通扉が準備工事に留めてある。
2024,10,20 岡 山 |