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1982年登場。広島電鉄の創業70周年を記念して海外から路面電車車両の譲渡を受けることになり、当時の西ドイツはドルトムントで使用されていた連接車両を譲り受けた車両である(尚、譲渡自体は創立65周年の時点で計画はされていた)。元々は1958年にデュワグ社で製造された3車体連接車両のGT-8形と呼ばれるもので、間接自動制御・直角カルダン駆動方式の車両が多いドイツの路面電車車両の中で、GT-8形は直接制御・釣り掛け駆動方式を採用していた。譲渡に際しては非冷房であった車内に冷房装置を取り付けたが、それ以外は塗装もそのままに使用を開始した。尚、70形は76編成・77編成の2編成が輸入されてきたが、77編成がドルトムント市電の標準であるアイボリーとベージュのツートンカラー、76編成がビールの全面広告車となっていた。車内は1人掛けと2人掛けのボックスシートが並んでおり、基本的な内装はドイツ時代と大きな変化はない。尚、連接部分には幌が採用されておらず、それゆえ車端部も他部分と同じ幅を確保している。前述の通り2編成が導入された70形は当初は荒手車庫に所属し、外国から譲渡されたとあって華々しいデビューを飾ると共に、他の連接車両と同様に宮島線で使用された。最高時速70km/hと高速性能のある車両ではあったが走行時の動揺が激しく、また車両保守も他の日本製の車両とは異なる面が多かったために徐々に運用を外れた。その後市内線の輸送力増強に伴い千田車庫に転属するも、1998年までに再び運用を離脱し、以降は車内へのテーブルやカーペット、カラオケ装置などの設置がなされ、波動用車両としての側面が強まった。2000年代には主に貸切運用に使用されたものの2006年に77編成が廃車解体され、残る76編成も一旦再整備が施されるも2008年以降は完全に休車状態となっている。その後2012年に内外装の改装が行われ、広電本社前にあるスーパーの一角で、電車レストラン「トランヴェール」として営業を行うこととなった。安住の地を得たかに見えるも、「トランヴェール」は2013年3月限りで営業を終了することとなり、その後もしばらくは同地に置かれた後、現在は2018年4月に開業した「THE OUTLETS HIROSHIMA」の建物内に移設され、プロジェクションマッピングのオブジェとして活用されている。
2013,03,12 トランヴェール |