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200形は先に導入された70形と同じく、当時の西ドイツから輸入された車両である。広島市とハノーファー市の姉妹都市締結5周年を記念し、広島側が寄贈した茶室の返礼という形で、当時ドイツトラム博物館で保存されていた元ハノーファー市電の1両が広島電鉄の車両として譲渡されている。この車両はデュワグ社で1950年に製造された直接制御、釣り掛け駆動方式の2軸単車で、戦災等で廃車になった車両の走行機器類を流用し、半鋼製の車体を新造した所謂戦災復旧車の1両である。このため広島電鉄では元の機器類が製造された1928年を製造年として扱っている。全長11m級と2軸単車としては大型で、前頭部に向けて大きく絞られた車体形状と側面の2枚引き戸に大型固定窓、屋根上にある大型パンタグラフと抵抗器が特徴である。車内は片側2人掛け、反対側4人掛けの固定クロスシートで、座席は全て木製となっている。またつり革は日本の車両では殆どお目にかかれない金属製となっている。広島電鉄への譲渡に際しては、ワンマン運転対応機器の設置や連結器の撤去(ハノーファーでは本車にトレーラーを連結して走行することもあり、連結器が使用されていた)、連結器跡へのパイプ式排障器の新設、車内の難燃化などの改造が施されたが、塗装を含め車体形状はドイツ時代と殆ど変わっておらず、既に投入されていた70形とともに、異国情緒あふれる車両である。この200形は1988年に輸入され、翌1989年より営業運転を開始した。「ハノーバー電車」として、当初は白島線、後に横川駅〜江波間において、主に日祝日限定ながら定期的に運用されていた。なお、本車は屋根上に抵抗器が設置されていることで冷房化が不可能で、更に窓が固定窓のため夏季期間中の運用は適さず、専ら11月から3月まで運用されていた。本車はICカードリーダーを設置していないこともあり、この定期運用は2017年から翌年のシーズンを以て終了し、以降は基本的に団体専用車両となったが、毎年クリスマスの時期になるとクリスマス電車として運用入りする。
2015,06,07 千田車庫 |