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デハ100形は1928年の上毛電鉄開業に伴い川崎車輌にて製造された由緒ある車両である。全長16m級の両運転台半鋼製車両であるが、当時の車両としては比較的屋根が浅く、リベットが少ない等の特徴を持っている。外観のみならず台車の枕バネにコイルバネを採用し、軸受けもコロ軸受(後に平軸受に交換)となるなど、当時の車両としては先進的な機構も取り入れられている。尚、駆動方式は釣り掛け駆動方式である。車内はロングシートであり、当初の内装はニス塗りとなっていたが後に塗装が施されている。デハ100形は4両が製造され、この他同形態ながら荷物室を設けたデハニ50形が2両製造されており、デハ100形グループは6両の陣容となっていた。1952年以降車体更新が施行されたが、この際に中央前橋方が前面貫通化され、運転台の移設(当初は中央部にあったが、通常の左側へと移設されている)、ウィンドウシル・ウィンドウヘッダーの換装に伴う車体強度の向上など、大幅な形状変更が行われている。また片側3扉であった車体は片側2扉に改められている。車体更新後も長らくの間主力車両の一つとして活躍し、1970年代末期に行われた車両置き換えに際しても、両運転台という使い勝手の良さもあって、電気機関車を保有しない上毛電鉄における貨物列車牽引用にデハ101・104号車の2両が残ることとなった。ただし残る2両とデハニ50形に関しては1981年までに廃車されている。この2両は貨物列車を始め線内のバラスト輸送に際しホッパ車の牽引にもあたった他、朝ラッシュ時には中央前橋〜大胡間を始めとする営業運転にも投入されていた。これに際し貨車牽引を目的に歯車比の変更が行われている。デハ100形の残った2両は1986年の貨物運用を廃止を経て、1997年には定期旅客運用からも撤退しており、この時点でデハ104号車は運用を離れ、後に廃車されている。デハ101号車はその後もイベント時の臨時運転やホッパ車を牽引したバラスト輸送に使用され続けており、製造から85年経つ現在も車籍を有し、本線上を走行可能な貴重な存在となっている。尚、デハ101号車は元々1995年以降は茶色一色に塗装されていたが、2008年に行われた全般検査に際しては車内のニス塗りの復活を始め、更に往時の姿に近い姿へと復元されている。現在は群馬県産業遺産にも指定されており、名実ともに上毛電鉄を代表する存在という事ができる。
2011,12,27 大 胡 |