F10形
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 2014年登場。福井鉄道における新たな観光用車両として、土佐電気鉄道(現在のとさでん交通)を廃車となった735形を譲り受け、改造を施した車両であり、「レトラム」の愛称を持つ。元々は1965年にエスリンゲン社で製造された西ドイツはシュトゥットガルト市電のGT-4形で、同系車は21世紀まで現役で使用されていたものの、Uバーン(LRT)化の進捗により1989年に廃車された車両のうち2両が創立85周年を記念し外国製の電車を導入することを計画していた土佐電気鉄道へと譲渡されている。GT-4形は2車体連接車だが、普通の連接車とは異なり連結面は補助用の台枠を設けることで台車の代替とし、2車体2台車となっているのが特徴である。また駆動方式はカルダン駆動方式で、前述の台枠に主電動機が装荷されている。因みにシュトゥットガルト市電は基本的にループ状になっているため、1編成で運転台は片側にしかついておらず、また側扉も片側にしか取り付けられていない。そのままでは日本での使用にそぐわないため、譲渡に際しては廃車された2編成から運転台のついている車両のみで編成を組成(この際1両は方転し、パンタグラフを撤去している)し直す大規模な改造が施されている。これにより編成の両端に運転台がつき、側扉も1両ずつ異なる向きに設けられている。尚、冷房装置は取り付けられていない。土佐電気鉄道では種車の車号の1つである「735」をそのまま形式名とし、塗装・方向幕がドイツ時代のままの姿で運用を開始した。日本語での行き先表示は系統表示器を活用しているが、大きさが非常に小さいため独自仕様の方向幕が採用されている。735形は外国電車の第1弾として運用を開始したが、2009年1月のICカード導入に際しては対応しなかったため運用を離れ、特別運行時以外は桟橋車庫に留置されていた。福井鉄道への譲渡に際しては京王重機で福井仕様への改造が施されているが、外観上は方向幕の交換以外土佐電気鉄道時代と殆ど変化はない。また、形式名は変更されたものの車番は従来通り735号車となっている。新たな観光用車両として福井で再起したF10形だが、福井鉄道に於いても引き続き冷房を装備していないため、基本的に春と秋に臨時列車として運転される。2015年からは運用範囲が全線に拡大しており、今後もその活躍が期待される。

 2023,07,31 北 府


2023/08/02