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津軽鉄道のトム1形は1929年の路線開業にあわせて日本車輌で製造された15t積みの無蓋車で、12両が製造されている。全長8m弱の2軸無蓋車で、側面は上部のみあおり戸となっており、その代わり車体中央部に観音開きの鉄製扉が備えられている。妻板、側板とも側扉以外は木造であった。これは同時期に製造された鉄道省の無蓋車に類似した形態である。津軽鉄道は起点となる津軽五所川原で五能線と線路が接続されており、国鉄同型車であるがゆえに五所川原から国鉄線にそのまま乗り入れて、沿線で採れるリンゴや小泊産の海産物の輸送等の他、津軽鉄道沿線への物資輸送に重用された。芦野公園での桜開花シーズンをはじめ、多くの乗客を輸送する時期では荷台に乗客を乗せる旅客用途で用いられることもあった他、降雪時に雪を運搬する用途、保線用途でバラストや資材を輸送する等、貨物のみならず多用途に用いられた。なお、後年一部の車両について妻板が木製から鋼製のものに換装されている。事業用途でも用いられていたこともあることから、1984年の貨物輸送廃止後も3両が残り、引き続き事業用途に用いられた。近年は本来の用途の他、DC352牽引のフォトランで用いられるなど日の目をみる機会もある。津軽鉄道黎明期を知る希少な存在であるとともに、観音開き構造の側板を有する無蓋車は現存例が少なく、その意味でも貴重な車両であると言える。
2019,01,15 津軽五所川原 |