1A形
トップページ鉄道写真図鑑名古屋市交通局協力会>1A形
 名古屋市交通局協力会はかつて存在した名古屋市の外郭団体にあたる社団法人であり、現在は株式会社名古屋交通開発機構が引き継いでいる。同法人は主に駅内における切符販売、清掃業務、駅及び車内への広告掲示等の業務を行っていたが、昭和期の一時期は社団法人として唯一地方鉄道法に基づく鉄道運営も行っていた。これが東山公園モノレールと呼ばれるものである。東山公園モノレールは東山動植物園内にある動物園駅と植物園駅の間、全長471mを結んだが、新たな都市交通システムを模索していた当時の実験線的な位置づけが強く、その立ち位置は東京都の上野動物園モノレールと似る。このモノレールは上野動物園モノレールと同様懸垂式が採用されたが、上野動物園モノレールとは異なり、フランスのサフェージュが開発した新たな懸垂式が採用されている。これは軌道を箱型の筒状とし、下部に開口部を設けたもので、筒状の桁内に台車やモーターなどの走行機器を積載し、そこから支柱を通じて車体を懸垂する手法をとっており、開口部の両側に設置されたゴムタイヤで走行する。この手法では桁内が降雨、降雪等の影響を受けないことから天候に左右されず安定した走行が可能となる他、曲線通過時の横揺れを低減できること、建設に際し道路幅をさほど広げなくても建設できること等の利点を備えている。このサフェージュ式モノレールの導入にあたっては三菱重工業が子会社(日本エアウェイ開発株式会社)を立ち上げている。

 同社により開発され、東山公園モノレールに投入された車両はアルミ製の全長17m級車体の1両単行で、丸みを帯びた半流線形となっている点と、銀色を基調に赤い帯が巻かれた姿のため、「ウルトラマン」と称されることがあった。側扉は両開きの外吊り式となっているが、戸袋が外側に張り出した独特な構造となっている。車内は観光用途で用いられることもあり4人掛けのボックスシートとなっていた。将来的には東山動植物園周辺の団地も結び園内輸送と通勤輸送の両立も視野に入れられていたが、結局本路線は伸びることなく推移している。1964年の開業直後は盛況であったというが、動物園駅が正門から遠い位置(比較的植物園に近い側)にあったこと、植物園駅そのものも動物園の敷地内にあり、開業当時別料金制をとっていた植物園のアクセスとしては不十分であったこと、その後の路線自体の陳腐化もあり、10年後の1974年10月には廃止の憂き目に遭ってしまった。ただし、本路線で得られたデータは1970年に開業した湘南モノレールや1988年に開業した千葉都市モノレールに受け継がれており、本路線が現在も存在する懸垂式モノレールの礎を築いていることは事実である。なお、本路線以来サフェージュ式モノレールの路線は三菱重工業が路線及び車両開発を一手に担っている。本モノレールの廃線後、車両自体は旧植物園駅舎・ホーム及び付帯する構造物と共に残されており、50年近く経過した現在も静態保存されている。長らく無塗装の状態で保管されていたが、2016年に再整備され、その際に往年纏っていた赤色の帯が復元されている。因みにモノレール亡き後の園内交通機関としては、遊具扱いながら動物園入口付近と植物園を1周する跨座式モノレール「スカイビュートレイン」が1987年に開業し、こちらは現在まで活躍を続けている。

 2024,02,17 旧植物園駅


2024/02/24