デキ1形
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 1922年登場。秩父鉄道の電化開業(直流1200V)にあたり、石灰石輸送等の貨物列車牽引用の電気機関車としてアメリカより輸入された凸型電気機関車である。車体はウェスチングハウス社、電装品などの機器類はボールドウィン社にて製造されている。全長は凡そ10mであり、前述のとおりボンネットが突き出した凸型の形状となっているが、乗務員扉も前方に設けられたことから前面は左右非対称の形状となっており、後に製造された信濃鉄道1形(後の国鉄ED22形)と類似した外観をもつ。尚、登場当初にはボンネットに警鐘が備えられており、同機の出自を物語る特徴となっていたが、後にはずされている。このグループは5両が製造されており、後述するデキ6・デキ7と共に、秩父鉄道の電機黎明期を支える重要な車両となった。当初は大型の菱形パンタグラフを搭載していたが、後に小型のものへと換装された。また1952年の1500Vへの昇圧に際しては、登場時はアメリカ製のもの(主電動機出力93.3kw)を搭載していた電装品が国産のものへと交換され、それにより主電動機の出力も116.6kwへと向上している。塗装は長らくの間ぶどう色を堅持していたが、後継の機関車が青系の塗装へと塗り替えられるのに際し、1980年には青色一色に塗り替えられた(ただし白い線は配されていない)。デキ1形はこのような改造などの変遷を経つつ、60年以上という長きに渡り、後継機に伍して貨物輸送に使用されたが、貨物列車の縮小によって1984年より廃車が始まり、1988年末には全機が運用離脱。そして最終的には1994年までに全車廃車されている。ただし長年に渡り親しまれてきた機関車であるため、デキ1が秩父鉄道車両公園、デキ3及びデキ4が持田〜熊谷間と、3両が現在も秩父鉄道沿線にて静態保存されている。尚、デキ1形としては他に1925年にイギリス(車体がNBL社製、電装品がE.E社製)で製造されたデキ6・デキ7の2両も在籍していたが、この2両は所謂「デッカー」と呼ばれるデッキ付の箱型機関車であり、形態及び車両性能とも他の5両とは大きく異なる車両であった。機関出力は他の5両に勝っていたが、こちらは機器換装を行わないまま昇圧改造を行ったこともあり、老朽化が進んだことから1977年には廃車されている。

 2013,03,07 秩父鉄道車両公園