ED38形
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 ED38形は1960年から1967年にかけて、国鉄で廃車となったED38形3両を譲り受けたものである。元々は阪和電鉄によって1930年以降に4両が製造された電気機関車であり、登場時はロコ1000形という形式が付けられていた。戦前製の電気機関車でありながら、溶接を多用してすっきりとしたデザインのデッキ無し箱型車体となっている。また、阪和電鉄は「超特急」に代表される電車の高速運転が早くから行われており、電車の遅れを助長しないよう高速運転向きの性能となっていた点も特筆される。歯車比が高速よりに設定されていた他、当時としては大出力の電動機を搭載し、更に発電ブレーキ・電力回生ブレーキを標準搭載しており電車運転の妨げにならないよう考慮されていた。また、総括制御に対応している点も当時としては珍しい事例である。外装・車両性能とも当時の電気機関車では最先端を行くものと言え、国鉄電機を含め、戦前の電気機関車の決定版とも言うべき車両である。ただし4号機に関しては戦中期に製造されたことからやや簡略化した設計となっており、電力回生ブレーキも装備されないなどの差異がある。阪和電鉄は南海電鉄への合併後、1944年に国有化されて阪和線となっているが、同機は1952年にED38形に改番の上、引き続いて国鉄阪和線で継続使用された。尚、1952年には走行機器の標準化がなされ、特徴的な電力回生ブレーキ等の機構は失われている。1960年には後継機であるED60形に置き換えられて国鉄を廃車されたが、以降2両が秩父鉄道、1両が大井川鉄道に譲渡された。ただし1967年までには3両とも秩父鉄道に集結している。尚、4号機は三岐鉄道に譲渡された後、1964年に廃車されている。秩父鉄道ではデキ1形やデキ100形と共に貨物輸送の主力車両として活躍したが、1980年に1両が廃車となった後、残る2両もデキ300形やデキ500形の台頭によって追われており1988年までに廃車されている。現在、1号機のみ秩父鉄道車両公園に静態保存されており、戦前製には見えない特徴的な姿を現在にとどめている。

 2013,03,07 秩父鉄道車両公園