323形
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 323形は1956年に2両が製造された北方線用の車両である。西鉄北方線は北九州線の一支線であり、北九州本線の魚町から分かれ、城野を経て北方まで向かう全長4.6kmの路線で、他の軌道線が軌間1435oであったところ、この路線のみ軌間1067oであり専用の車両が投入されていた。元々単車主体であったが1948年に同線初のボギー車として321形が2両されており、本形式はその続番から車号が振られている。321形が比較的一般的なスタイルを有していたのに対し、本系列ではバス用車体を応用した軽量車体が採用されており、北方線の車両限界に合わせるように設計されたその車体は「たまご型」と形容される丸みを帯びたもので、側面にはコルゲートがつけられた。更に前面は大きく絞られた形状となっており、花巻電鉄や福島交通の車両等と同様に「馬面電車」と称されることもある独特なものとなっている。車体は軽量化等により近代化がなされたものの、乗降扉は手動式であった他、走行機器類はコスト削減もあり発生品が用いられており、台車はブリル76E(木南車輌製のコピー品)、制御方式は直接制御方式となっている。なお、集電装置は当初ビューゲルで、後に菱形パンタグラフに換装されている。車内はロングシートで前述のとおり2両が製造されたが、以降は乗客増に伴い連接車331形を導入することとなったため以降の増備はない。他の軌道線にはない独特な形状で北方線の主力車両として使用されたが、同線は北九州高速鉄道の建設に先立ち1980年に廃止となったためその時点でお役御免となった。北方線廃止後は324号車が軌間の同じ土佐電気鉄道に譲渡され、塗装変更等のうえ1981年に同社の300形として竣工した。ただし側扉の自動化やワンマン化改造などは行われず、当初より貸切用途を中心に用いられた。1985年には内装を改造のうえ「カラオケ電車」となり、以降はイベント・貸切用途専用車となった。以降は夏季の「ビアホール電車」にも用いられている。戦後製の路面電車車両ながらツーマン仕様で手動扉を有している点、かつ西鉄軌道線の生き残りとしても貴重な存在であったが、非冷房のまま存置されたこともあり、2007年には600形を簡易改造した「おきゃく電車」(こちらは300形とは異なり冷房付きで通常の運用に充当することもできる)に置き換えられることとなり、同年中に廃車となった。その後2008年に北九州線車両保存会に引き取られることとなり、JR筑豊本線の筑前山家駅前に保存された後、2012年にはかしいかえんに移設され、以降同地で静態保存されている。

 2019,03,10 かしいかえん


2021/01/02