160形
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 160形は1958年に導入された車両である。元は西鉄福岡市内線で活躍した101形(木造車)だが、元々は九州電気軌道(西鉄北九州線の前身)が1911年の路線開業に合わせて川崎造船所で製造した1形である。全長11m級の高床式木造ボギー車で、製造当初はオープンデッキ構造、ポール集電であり、前面には網状の排障器が取り付けられていた。同線は軌道線ではあるがインターアーバンとしての性格が強く、駅間距離も比較的長めに設定されたことから、車輪径は一般的な路面電車車両よりも長く、歯車比も高速運転向けに設計されている。同形式は34両が製造されたが、その大半は1942年の西日本鉄道発足の後、1950年以降に福岡市内線に転属しており、同線における車両大型化に寄与した。この時点で乗降扉の設置や方向幕の移設、屋根形状の変更を始めとする更新工事がなされ、形式も101形に改められている。このうちの6両が1958年から翌年までに長崎電気軌道に譲渡された。譲渡時には塗装をクリームと緑のツートンカラーに変更のうえ、集電装置はビューゲルに換装された。なお、長崎での車号は161〜163及び166〜168で、164・165は欠番となっている。長崎電気軌道では単車を置き換え車両の大型化に貢献しているが、更なる車両の近代化により1970年代より淘汰が進み、1978年以降は168号車のみが残った。この時点で168号車は「明治電車」として動態保存されることになり、緑一色に塗り替えられた上でイベント等で不定期に使用されるようになった。1984年から翌年にかけては更に大規模な改修がなされることとなり、この時点で屋根形状が製造当時に近いものに復元され、塗装も現在まで続く茶色の塗装となり、正面及び側面に唐草紋様がつけられた。ワンマン運転に対応せず、かつカードリーダー等の設置もないため現在は基本的に定期運用には就かず、年3回のイベント走行が中心となっている。しかし現在まで本線上を走行できる車両であることは変わらず、現在走る長崎電気軌道よりも古い歴史を持つ車両としても(長崎電気軌道の創業は1914年)、非常に貴重な存在である。2011年には製造から100年を迎えており、本線上を走行できる鉄道車両としては唯一の明治時代製車両かつ木造電車である。

 2016,11,13 浦上車庫