ケ100・ケ200形
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 箱根登山鉄道の鋼索線は、鉄道線と接続する強羅とロープウェイに接続する早雲山の間の凡そ1.2km、高低差209mを結ぶ路線で、箱根回遊コースの一角を占めている。その歴史は古く、当時の小田原電気鉄道が1921年12月に開業させたところにまで遡る。現在の近鉄生駒鋼索線に次いで2番目、関東では最も古いケーブルカー路線である。元々強羅にある別荘地や保養所へのアクセスも主眼におかれたため、沿線には4つの駅が設けられており、ケーブルカーの一路線としては最も駅数が多い。他の鋼索線の例に漏れず1944年には不要不急路線として休止され、線路等は供出されたが、1950年には営業を再開している。営業再開時点ではロープウェイは開業していなかったが、早雲山から芦ノ湖までのバスに接続し、箱根周遊ルートを構築した。1960年のロープウェイ開業後は大涌谷方面へのアクセスルートも担うようになり、輸送量は急増した。冒頭にも記載したとおり、現在に至るまで箱根回遊の一角を占める重要な存在となっている。戦後は概ね20数年で車両が代替わりしており、2021年現在の車両は戦前の車両から起算し5代目となる。

 4代目となるケ100・ケ200形は、旧型車両の老朽化に加えて輸送力の更なる増強のという目的から1995年にスイスのガングロフ社で製造されたものである。鉄道線では1993年から3両運転が行われるようになり、それに呼応するように輸送力増強が求められたことから、従来の車両が単車であったのに対しこちらは箱根登山鉄道の鋼索線車両として初めて2両連結となった。強羅方がケ100形、早雲山方がケ200形という形式で、2両併せた全長は24.7mとなっている。現在に至るまで関東地方のケーブルカーでの2両連結は、この箱根登山鉄道が唯一である。車体はそれまでの車両とは大きく異なり、スイス製ということでヨーロピアン調のデザインとなっている。外装は先代車両が小田急3000形や3100形に類似した塗装となっていたのに対し、こちらは小田急10000形や自社鉄道線の2000系と連続性を持たせた赤と白を基調とした塗装となった。また、既存の車両と比べて側窓が大幅に拡大した他天窓も備えられ、側面の眺望性向上が図られている。車内はボックスシートを基調としているが、車端部を中心に一部にはケーブルカーとしては珍しいロングシートも備えており、更にロングシート部分にはつり革が備えられている。通常座席のモケットは青紫時にアジサイが描かれた独自のもので、目を引くものであった。また、日本のケーブルカーとしては初めて、冷房装置を標準で装備している。このケ100・200形は1995年3月に営業運転を開始し、24年に渡り箱根観光の担い手として活躍した。なお、本形式の竣工に併せて軌間の変更(987o→983o)も行われている。途中、集電装置の変更(菱形→シングルアームパンタグラフ)、行き先表示器の追設(LED式、当初は表示器はなく表示板を車内から掲示するのみであった)等の後天的な改良も施されている。2019年から翌年にかけて行われた設備更新に際し車体を新製のものに置き換えることとなったため、2019年12月に本形式による営業運転は終了した。その後、台車は5代目車両のケ10・20形に流用されている。

 2014,01,26 強 羅


■Variation
 早雲山側のケ200形。基本的なデザインは麓側のケ100形に準じていた。

 2014,01,26 早雲山
2021/02/06