ワ100形
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 黎明期のJR貨物では、鉄道とトラック輸送を一体化した「複合一貫輸送」の実用化を模索していた。国鉄末期の1986年に開始されたピギーバック輸送はその最たる例と言えるが、ピギーバックとは別に「デュアル・モード・トレーラ(DMTと略す)」という、道路上ではセミトレーラーとなり、線路上ではそのセミトレーラーをそのまま貨車にするという輸送形態が検討され、その試作車として1992年に落成した車両がこのワ100形である。車体はアルミ製で、形状は大型トラックのセミトレーラーそのものと言え、公道走行用のダブルタイヤを備えている。道路上ではこの車体にトラクタを繋げることで走行できる。車体にはDMTと表記されたロゴマークが配され、これは車両により配色が異なっている。鉄道線上で用いる際は、タイヤ部分を空気バネで上昇させ、そこに高速走行可能な台車を挟み込むことで線路上の走行が可能となった。なお、台車は連接構造とされ、組成された際は3車体4台車という構造となる。台車はコキ100系列と同型で、応荷重装置つきの電磁自動空気ブレーキを備え、最高時速110km/hでの走行が可能となっている。本形式はセミトレーラーの車体がない時は台車のみが残るという特異な車体から、ブレーキ装置は台車ごとにユニットブレーキが備えられている。また、セミトレーラー部分の下部には各種アダプタや配管を通せる機器を搭載しており、台車とジャンパ栓やブレーキ管を繋ぐことで、車両全体の制御が可能となっている。ワ100形は試作車3両(4台車)が落成し東海道貨物線等で試運転、実証実験が行われた。本車は前述のとおりセミトレーラ部分が道路、鉄道と直通でき、かつモード転換に専用の地上設備を必要としなかったことから荷扱時間の短縮や効率化が図られたが、実際はセミトレーラー部分と台車の着脱が煩雑で時間がかかってしまい、それが欠点となっていた。更に本車は法律上鉄道の車籍と自動車の車籍の双方を有さなければならないという問題を生じていた(このため鉄道車両でありながらセミトレーラー側面には車庫証明が貼られている)。この点は本形式最大の欠点といえ、解決の糸口が見えぬまま結局量産体制には移行せず、試作車3両・台車4台のみの陣容でおわってしまった。2002年には3両とも車籍抹消されたが、現在も川崎貨物駅構内に留置されており、その姿を今に伝えている。

 2018,05,20 川崎貨物


2023/07/10