ホキ1000形
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 ホキ1000形は1990年以降1995年にかけて試作車1両、量産車33両が製造された35t積みのホッパ車で、登場時は小野田セメントの保有する私有貨車であった。一般的にタンク車やホッパ車は、片道は燃料や砕石などを積載するが、もう片道は積載しない状態で返送されることが常であった。双方間で異なる貨物を積載することができればその分運用の効率化に繋がるが、本形式はこの「複数積荷兼用貨車」を日本のホッパ車では初めて実用化した車両であり、炭酸カルシウムとフライアッシュを専用種別とする。フライアッシュは石炭を燃焼した際に生じる灰の一種で、かつては産業廃棄物であったがこれをセメントに混ぜると質の良いコンクリートが生成可能なことが判明したため、重要な資源として扱われるようになった。本形式は三岐鉄道の東藤原と衣浦臨海鉄道の碧南市の間で専属に運用されるが、東藤原からは火力発電所の燃料となる炭酸カルシウムを積載し、三岐鉄道・JR線・衣浦臨海鉄道経由で碧南市まで輸送される。この炭酸カルシウムは碧南火力発電所において硫黄酸化物の除去に用いられる。逆に碧南火力発電所からは、同所で生成されたフライアッシュを積載し、逆のルートで東藤原まで輸送され、同地の太平洋セメントの工場に搬入されセメントの原料としている。炭酸カルシウムとフライアッシュの場合、双方の積荷は多少の混在に耐えるとされたため、本形式のような「複数積荷兼用貨車」が実現している。車体は全長14.5mで、建築限界いっぱいまで広げられた蒲鉾型のホッパーを有する。JR化後の新製貨車のため、塗装についての制約がなくなり、本形式は積載物の色に因んで、白色をベースに青い帯を配したものとなっている。荷役方式はセメントホッパ車にみられるようなエアースライド式となっており、ホッパー内に極力積荷が残らないよう、ホッパー下部の傾斜は比較的急峻となっている(試作車では傾斜が量産車よりも緩く、量産車で改良された)。1995年に増備された2両を除いて台車は廃車発生品が流用されており、最高時速は75km/hとなっている。その姿から俗に「白ホキ」と称され、前述のとおり東藤原〜碧南市間限定で用いられたため、名古屋界隈でしか見ることのできないご当地貨車として知られた。長い間東藤原〜碧南市間の貨物輸送に従事したが、前述のとおり一部を除き台車は発生品があてがわれており、特に走行機器類の老朽化が進んだことから、2018年以降完全新造車であるホキ1100形への置き換えが開始され、大半の車両は既に運用を離脱している。

 2012,12,05 大 府


2023/07/20