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肥薩線の人吉〜吉松間は日本三大車窓にあげられる「矢岳越え」を有し眺望の良い区間であることで知られ、旅客需要は少ないが観光要素を多分に含む区間である。この区間を走る普通列車の一部にキハ31形を簡易お座敷車化した車両が充当され、同車両が充当される列車に「いさぶろう」「しんぺい」という愛称がつけられた。肥薩線開業時の逓信大臣である山縣伊三郎、鉄道院総裁である後藤新平に因んだもので、矢岳越えの途中にある矢岳第一トンネルに両者の揮毫が取り付けられていることに起因する(当時の肥薩線は鹿児島本線として建設されており、同区間を含む区間が開業したことで、鹿児島までの鉄道網が構築されており、このトンネルの貫通は日本鉄道史においても重要な意味を有する)。1996年からキハ31形により充当されたこの列車は、2004年の九州新幹線部分開業により専用車両が充当されることになり、この専用車両としてキハ40系列に白羽の矢が立ち改造が施された。改造された車両は水戸岡鋭治氏により、「昔懐かしい20世紀の旅」というコンセプトのもとデザインされている。車体は800系の帯色でもある古代漆色に塗装され、レタリングが施されている。また霧の多い沿線の特性から前面にはフォグランプが増設されている。キハ140形のみ、眺望性向上のために中央の側窓が天地双方に増設され、天窓も設けられた。車内はほぼ全てボックスシートとなっている。ボックスシートは背ずり部分に丈の高い木枠が設置されており、フローリング床、白熱灯調の電球とともにレトロ調の内装となっている。キハ140形に設置された中央の窓部分はフリースペースとなっており、カウンターテーブルが設けられている。サニタリースペースはキハ47とキハ140に設けられているが、キハ47-8159のトイレは車いす対応の洋式トイレに改められている。なお、車端部にはモニターが設置されており、前面展望が表示される。キハ40系列を用いた「いさぶろう・しんぺい」は、当初こそキハ140形1両のみであったが、2004年10月にキハ47形が1両、2009年に更にキハ47形1両に類似した改造が施され、計3両の陣容となった。元々普通列車として人吉〜吉松間を走行していたが、2016年からは特急「くまがわ」「九州横断特急」を代替する形で一部が熊本まで運行区間が延長され、翌年からは熊本〜人吉間が特急列車としての運転となり、普通列車から一気に特急に格上げされる列車となった。肥薩線を代表する観光列車であったが、2020年7月の豪雨被害で肥薩線が不通となったことで、本来の運行区間では運行できなくなった。そのため同じ肥薩線を走行していた「かわせみ・やませみ」と共に鹿児島本線の臨時列車等で用いられた。2022年にキハ140形が「ふたつ星4047」に改造されるため脱車され、以降はキハ47形2両となっていたが、これも久大本線の新たな観光特急「かんぱち・いちろく」の改造種車に選定されたため、2023年10月を以て運転を終了し、肥薩線の復旧を待たず姿を消すこととなった。
2013,03,16 人 吉 |