ケーブルカー
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 皿倉登山鉄道の運営する皿倉山ケーブルは、麓側の山麓駅から山上駅までの凡そ1.1q、高低差440mを通常時7分かけて結んでいる。当時の八幡市(現在の北九州市八幡東区・八幡西区)の市制40周年を記念し、市内にある皿倉山へのアクセス手段として1957年に開業したのが始まりで、鋼索線としては少数派の戦後に開業した路線である。当初の運行会社は帆柱ケーブルという名前で、山上駅より更に上部へ移動できるリフトも同時に運行していた。当初より当時の八幡市が出資し、八幡市合併後の北九州市もそれを継承し、最終的には全額出資しており、開業時の経緯もあり「市民鉄道」の様相を呈しているといえる。元々は帆柱ケーブルが第一種鉄道事業者で施設も含めて保有・管理を行っていたが、2012年以降は施設・車両は北九州市が保有して第三種鉄道事業者となり、帆柱ケーブルはそれを借用して運送を行う第二種鉄道事業者となった。なお、事業形態変更前の2006年にはリフトを廃止し、翌年に代替としてスロープカーが建設され、山上駅から更に上部へのアクセスを担うようになった。因みに旧社名の「帆柱」は皿倉山の至近に位置する帆柱山に由来していたが、紛らわしいという指摘もあり、2015年4月に現在の会社名に変更されている。ただし2015年8月現在でも、ケーブルカーの車内放送では「帆柱ケーブル」と案内している。

 現在使用されている車両は2代目にあたり、2001年に行われた北九州博覧会に合わせ、同年にスイスSWA社で製造されたものである。2両のうち、黄色く塗装されている車両は「はるか」、青く塗装されている車両は「かなた」という愛称がつけられている。皿倉山は昼間の眺望もさることながら夜景でも有名で(新日本三大夜景の一つと称される)、昼夜問わず景観を楽しめるよう、現行車両は眺望にこだわった設計となっている。前面は流線形で、窓ガラスは大型曲面ガラスが採用されている。また、天井は全てサンルーフとなっており、照明は鴨居部に取り付けられている(この照明は夜間走行時は夜景観賞のため落とされる)。サービス電源は蓄電池で賄うようになっており、集電装置は取り付けられておらず、これにより眺望の妨げとなっていた架線の撤去が実現している。冷房装置は取り付けられておらず、駅停車中に冷風を送り込むことで代替としている(この手法は京阪電鉄男山ケーブルでも見られる)が、送風装置として小型の扇風機も壁に取り付けられている。座席はクロスシートで、座席は1人1人が明確に区分されているものが採用されている。基本的には4人向かい合わせになっているが、山麓方最前部は2人掛け、山上方の最前部は3人掛けとなっている。同車の導入に際しては車体のみならず巻き上げ機も新しいものに換装され、ケーブルカーとしては日本最速となる時速18km/hでの営業運転が行えるようになった。また、制動方式が従来のデオドルベル型から、油圧バネを用いたスプリングブレーキ型に改められている他、車両とロープの接続方法も従来とは異なる新しい手法がとられている。このため、現行車両の導入に際しては交通安全環境研究所等による性能評価試験が行われている。車両製造以外の設備更新は日本ケーブルによって行われており、それ故車両の前面にはSWA社のロゴマークだけでなく、日本ケーブルのロゴマークも取り付けられている。現在の体制となってからは15年以上が経過しているが、変わらずに皿倉山への足として使用されている。

 2015,08,24 山 麓


■Variation
 青く塗装されている「かなた」号を山頂側から望む。山頂側も大型曲面ガラスを用いた流線形となっており、山麓側とほぼ同一のデザインとなっている。

 2015,08,24 山 上
2016/08/28