デキ210形
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 デキ210形は1925年に製造された愛知電気鉄道(名鉄の前身の一つ)のデキ362号機を出自とし、戦後の豊橋鉄道発足時に渥美線に在籍していた同機をそのまま譲受のうえ、1968年の機関車形式改正に際して改番を施したものである。愛知電気鉄道のデキ360形は現在の築港線開業に伴う貨物輸送増強を見据え、1923年から1925年にかけて3両が製造された同社初となる全長9m級の凸型電機で(それまでの愛知電気鉄道は電動貨車が1両在籍するのみで、必要に応じ旅客車が貨車牽引を行っていた)、愛知電気鉄道の路線の昇圧開始前に製造されたことから電装品は600V専用であった。他の凸型電機に比べて丸みを帯びた屋根を有し、正面左右に配置された窓が楕円形、中央部分の窓が両開き構造となっているという特徴を有していた(楕円窓は後年四角形状の窓に改められている。製造当初はポール集電で、電装品は当時の旅客車両と同じウェスチングハウス社製のものが搭載されている。1925年から同社では本線系統の昇圧が進んだため、本形式は西尾線など後年まで600Vで存置された路線での貨物輸送に充当された。愛知電気鉄道は1935年に合併で名古屋鉄道となり、デキ360形もそのままの形式で継承された。名古屋鉄道はその後1940年に渥美鉄道を吸収しており、特に戦後期に入ると渥美線の貨物にも充当されるようになった。1954年の名古屋鉄道から豊橋鉄道への経営譲渡の際は、当時渥美線主体で運用されていたデキ362号車がそのまま譲渡されている。なお、豊橋鉄道に譲渡されなかった2両は最終的に瀬戸線に転じて1967年までに廃車された。豊橋鉄道では他の機関車と共に前照灯のシールドビーム2灯化がなされたほか、塗装も一般車両と同じクリーム地にスカーレットの帯を巻いた豊橋鉄道の標準塗装を纏い、他形式に伍して貨物輸送から入換運用まで幅広く従事した。豊橋鉄道の貨物輸送は1984年に廃止されたが、廃止後もデワ10形と共に生き残り、以降は高師駅での入換や工事列車への充当、新形式譲受時の搬入など事業用機関車として用いられた。1997年の昇圧に際しては機器類が昇圧に対応していないことから他の車両と共に廃車され、これにてお役御免となった。廃車後はデワ10形共々田原市内の「サンテパルクたはら」に移送され、同地にて静態保存されている。

 2014,06,07 サンテパルクたはら
2024/02/23